奥歯がないまま放置は危険|トラブル事例と治療法を紹介
何らかの原因で「奥歯を1本だけ抜歯することになった」場合、中には治療をせずに放置してしまう人もいます。
実は、奥歯が無いまま放置するのは様々なリスクを伴います。当記事では、そのリスクについて深堀してご説明していきます。
奥歯がないまま放置することで起こる5つのトラブル
奥歯は親知らずも含めると上下の顎にそれぞれ8本ずつ、合計で16本あります。たとえ1本でも、奥歯がないと下記のようなトラブルの引き金になります。
- 隣接する歯が移動し、歯並びが悪くなる
- 噛む力が低くなり、食べられるものが減る
- 噛み合わせが悪くなる
- 正確な発音が難しくなる
- 顎の骨が収縮し、見た目の印象が変化する
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
1.隣接する歯が移動し、歯並びが悪くなる
仮に1本でも奥歯が抜けた場合、そのまま放置すると周囲の歯が動き、歯並びが乱れてしまう恐れがあります。
これは、抜けた部分の隣の歯が空いているスペースに向かって移動や傾きを起こしてしまうためです。
また、抜けた奥歯の反対側にある歯が、空いたスペースに向かって伸びてくるという現象も見られます。こうした状態になると噛み合わせに悪影響を及ぼすため、食べ物を噛む力が下がり、顎に余計な負担をかける原因になります。
2.噛む力が低下する
もちろん1本の奥歯を失くしただけであれば、体感的には大きなものではありません。これは、残りの健康な歯が機能を補い、食事の際の不便さを最小限に抑えられるためです。
しかし、奥歯を1本でも失うと噛む力は低下します。噛む力が足りないと消化の過程にも影響を与え、食べ物が十分に噛み砕かれずに消化器官に入るため胃腸への負担が増加します。
このような状態で食事を続けると、やがて消化不良や栄養吸収の問題を引き起こし、長期的な健康問題にもつながりかねません。
3.噛み合わせが悪くなる
片側だけ奥歯がない場合は、特に噛み合わせのバランスが崩れやすくなります。
噛み合わせが悪くなると、噛み合わせが悪くなると、体全体にさまざまな不調を引き起こす可能性があります。
体全体の不調につながる恐れ
- 顎関節症のリスク
- 虫歯・歯周病のリスク
- 肩こり
- 頭痛
- 耳鳴り
- めまい
原因としては、噛み合わせのバランスが崩れることで、顎を支える筋肉に不均等な負担がかかり血流が悪くなるためです。さらに、噛み合わせが悪いと、食事の際に食べ物を十分に噛むことができず、胃炎や大腸炎などの胃腸障害を引き起こす恐れもあります。
また、噛み合わせの悪化を放置したまま生活していると、体の左右のバランスが崩れ、一方の腕が上がりにくくなるなど体の姿勢に影響を与えることまで考えられます。
このように、噛み合わせの問題は口内の健康に影響を及ぼすだけでなく、全身の健康や日常生活にも大きな影響を与えます。
4.正確な発音が難しくなる
奥歯がなくなると発音に影響が出ることがあり、特に「き」「し」「ち」といった音が正確に出しにくくなります。
前歯が欠けている場合は「さ」「た」「な」「ら」行の発音に悪影響が出ると言われていますが、奥歯も空気が漏れてしまうことで特定の発音がしにくくなるのです。
原因としては、奥歯が発音時の空気の流れをコントロールする重要な役割を担っているためです。音を作る際に必要な空気の流れを適切にコントロールできず、結果として正確な発音が難しくなってしまいます。
5.顎の骨が収縮し、見た目の印象が変化する
奥歯がなくなると、噛み合わせの高さが変わったり、顎が痩せたりすることにより見た目の印象が変化してきます。
さらに口元の高さが下がりほうれい線が目立ち、頬がたるんでしまうケースもあります。また、顎の骨が減ることで唇の形に変化が生じてシワが増えることもあり、老けた印象を与えてしまいます。
もちろん、奥歯1本がないだけではそこまで大きな変化は起こりづらいです。しかし、1本の欠損であっても、長期間放置するとお顔の見た目に変化をもたらす可能性は十分に考えられます。
奥歯を失ったら早期治療が必要な理由
奥歯を失くしたまま長い間、放置してしまっている方もいるかと思います。
しかし、奥歯を失ってから時間が立つと治療費が高くなったり、治療期間が長くなったりといった問題が出てきます。
時間が経つほど治療費が高くなる
奥歯を失ってから時間が経過すると「顎の骨の吸収」が進行します。仮に、奥歯をインプラント治療で再建する場合、顎の骨の吸収が進んでいると高度で複雑な治療が必要になるため、結果的に治療費が高くなるケースがあります。
また、奥歯を失ったまま放置すると、歯並びが悪くなることがあります。これにより矯正治療が必要になることもあり、結果的に治療費が高くなるケースがあります。
失くした歯を取り戻す治療は、経済的な観点から見てもなるべく早く行うことが大切です。
時間が経つほど治療期間が長くなる
失った奥歯を放置し続けると「噛み合わせが悪くなる」「他の歯に過剰な負担をかける」などの問題を引き起こします。結果的に、治療内容がより複雑なものとなり治療期間が長くなります。
抜歯直後であれば失くした歯の治療だけで完了するはずが、時間が経過することで別の治療が避けられなくなり、結果的にさらに多くの時間と費用がかかります。
失った奥歯を取り戻す治療方法
それでは、失った奥歯の機能や見た目を取り戻す治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な治療法としては下記の3つが挙げられます。
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
それぞれの治療法について見ていきましょう。
入れ歯
奥歯が欠けている場合の治療法の中で、入れ歯はもっとも手軽で経済的な方法です。
1本の奥歯が欠けている状況から、複数の奥歯がない場合に至るまで幅広く対応できます。予算が限られている場合にも、入れ歯は保険適用で治療ができるため、経済的に見ても優しいです。
しかし、一般的な保険適用の入れ歯は「見た目が目立つ」「固いものが噛めない」「お口に合わない」等のデメリットがあります。
そのデメリットを解消できるのが、自費診療の入れ歯です。保険が適用されないので費用は高くなるものの、見た目が良く、機能性にも優れておりおすすめです。
当院でも、本物の歯のように美しくしっかり噛める快適な入れ歯にこだわっておりますので、入れ歯をご希望の方は一度ご相談ください。
ブリッジ
ブリッジ治療も、失くした奥歯の治療法として一般的な方法です。
隣接する健康な歯を支えとして、人工の歯を橋渡しするように固定することからブリッジと呼ばれます。
固定式のため、長期間にわたって食事や会話の自然な感覚を維持できる点が大きなメリットです。
ブリッジは入れ歯に比べて異物感が少なく、取り外す必要もないため、自分の歯と同じ感覚に近い安定した状態を維持できます。
しかし、ブリッジを選択する際には、隣接する健康な歯を大きく削る必要がある点、ブリッジの下の歯茎の清掃が難しい点など、いくつかの考慮すべき点があります。
治療を検討する際には、メリットとデメリットを十分に理解し、歯科医と相談して最適な治療計画を立てることが重要です。
インプラント
インプラントはチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。
自然な歯の見た目と機能を再現できることから、最近はインプラントを選択される患者も増えています。
インプラントにすることで、本物の歯のような感覚を得られ、日常生活での食事や会話が快適になります。隣接する健康な歯を削る必要がないのもメリットの1つです。
また、噛む力が顎の骨に伝わることで骨の健康を維持し、顎の骨が減るのを防ぐ効果も期待できます。
ただし、インプラント治療は保険が適用されず、費用が高額になる可能性があります。また、全ての人が治療に適しているわけではない点も留意しておきましょう。
とはいえ、これらの点を踏まえても、インプラントは失われた歯の機能性・美しさを取り戻すための有効な選択肢です。
当院で行った奥歯のインプラント症例(80代女性)
ご相談内容 | 他院で数年前に入れたインプラントが動き、「膿んでしまい痛くて噛めない」と来院されました。 |
---|---|
診断結果 | インプラント周囲炎を起こしていた為、撤去せざるをえない状態でした。 膿んでからしばらく放置していたためインプラント周囲の骨が大きく溶けており、そのままではインプラントの埋入は不可能でした。 |
治療内容 | 84歳と高齢だった為、骨を作る為の大きな処置は避けたいと考えました。 インプラントを除去すると同時に、特殊な膜と人工骨を使い、増骨を行うこととしました。 6か月待ってからインプラントを埋入し、さらに3か月待ってから、最終的にジルコニアクラウンを装着しました。 |
治療期間 | 約1年半 |
費用 | ・インプラント:1本450,000円(税別) ※ジルコニアクラウンを含みます。 ・増骨手術:100,000円(税別) |
経過・現在 | 審美的に満足され、なんでも噛めるようになり、不自由なく食生活を送れると大変喜ばれました。 遠方にも関わらず毎月元気にメンテナンスに通われ、経過は非常に良好です。 |
治療の利点 | 口腔内だけでなく、その方の生活そのものが改善される効果がありました。精神的にも良い作用があったと実感しています。 |
リスクと副作用 | ・増骨手術の際大きく腫れる事があります。 ・骨が再生できない事があります。 ・インプラント周囲炎になることがあります。 |
当院でもインプラント治療を行っておりますので、ご興味のある方はまずはお気軽にご相談ください。
まとめ:奥歯がないまま放置はNG!まず歯科医師にご相談を
今回は「奥歯を失くしてしまったけど治療していない」という人や「そのままにしておこう」と考えている人に向けて、仮に1本失くしただけであっても考えられる影響について解説しました。奥歯が無いことにより発生するトラブルとしては以下が挙げられます。
- 隣接する歯が移動し、歯並びが悪くなる
- 噛む力が低下する
- 噛み合わせが悪くなる
- 正確な発音が難しくなる
- 顔貌が変化する
また、奥歯を失くしてから時間が経ち、こうしたトラブルが目立ちだしてから治療を行う際には抜歯直後に比べ費用や時間が掛かるという点も懸念されます。そのため、仮に1本だけであっても放置せずに治療することを強くおすすめします。
奥歯がない状態を治す治療法としては、「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」があります。
中でも、自然の歯そのものと言えるほどの機能性や美しい見た目を持つインプラントがおすすめです。
ただし、費用面の問題や治療期間の長さなど、慎重に検討すべきです。
岡歯科医院では「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の全ての治療に対応しておりますので、どの治療を選択すればいいか分からないという方もお気軽にご相談いただければ幸いです。