歯茎が下がる(歯肉退縮)の原因は?治療法や費用も解説

「最近、歯が長くなっている気がする」と感じたことはありませんか?

実はこれらの悩みは、歯肉退縮(歯茎が下がっている状態)が原因となっている可能性があります。

歯茎が下がると見た目が悪くなるだけでなく、虫歯のリスクが高くなったり、歯が抜けやすくなったりするため注意が必要です。当記事では、歯茎が下がる原因と治療法、予防策などについてわかりやすく解説します。

歯肉退縮の治療法・症例・費用

歯茎が下がってきた場合、自力で治すことはできません。必ず歯科医院で治療を受ける必要があります。ここでは、歯茎が下がってきた場合の治療法と症例、治療費を解説します。

歯茎の移植

歯茎の移植治療は、「根面被覆術」「結合組織移植術」という方法で行います。人工の材料ではなく、患者様自身の歯肉を移植するため、安全に治療を受けることができます。

Case1.「根面被覆術」

【治療内容とリスク】
歯周病の進行に伴い歯茎が退縮し、歯の根が露出していました。この症例では、歯肉を切除、移植することで綺麗な歯茎を取り戻すことができました。リスクとして痛みが生じる場合があります。

【費用】
1歯 税込3.3万円(患者さまのお口の状態により治療費は変動しますので、まずはお気軽にご相談ください。)

Case2.「総合組織移植術」

【治療内容とリスク】
痩せて薄くなっている部分に歯肉を移植することで、歯肉の厚みを増加させる処置を行いました。このケースでは歯肉の黒ずみも見られたため、歯肉移植を行い同時に改善させました。

【費用】
1歯 税込3.3万円(患者さまのお口の状態により治療費は変動しますので、まずはお気軽にご相談ください。)

※当院では、歯肉移植における豊富な治療実績がございます。歯肉退縮でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。→ご予約はこちら

ヒアルロン酸を使用した治療

歯科用ヒアルロン酸を使用して、下がったきた歯茎を戻す治療法です。

ヒアルロン酸は皮膚や関節などに多く存在している成分で、ぬるぬるしたゼリー状のような弾力性があります。加齢などが原因で体内からヒアルロン酸が減少すると、肌の乾燥やハリの減少がみられるため、アンチエイジングの治療でも行われることが多いです。

歯肉にヒアルロン酸を注入することで、歯肉が下がった部分の改善や、歯と歯の間の隙間の改善などに効果が期待できます。ただし、患者様の歯茎の状態によっては適応できないことがあります。

また、効果には個人差があったり、効果が一時的であったりなど、デメリットの多い治療です。そのため、当院ではヒアルロン酸を使用した治療は推奨していません。

歯茎の再生治療

再生治療は歯茎だけでなく、骨などの組織から再生させる方法です。再生治療には、「GTR法」と「エムドゲイン法」があります。

  • GTR法
    歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除き、その下にある歯周組織を再生させる人工膜を挿入する方法です。GTR法は高度な術式のため、後述するエムドゲイン法が多く用いられています。
  • エムドゲイン法
    歯茎を切り開いて、歯茎の成長を促す「エムドゲイン」というゲルを塗り、歯茎の再生を促す方法です。エムドゲイン・ゲルはタンパク質の一種で、歯が生えてくるときと同じ環境を再現できます。

エムドゲイン法はすでに世界40ヶ国以上で用いられている治療法で、高い安全性が実証されています。また、日本では2002年に厚生労働省の認可を受けている治療法です。

歯茎が下がる(歯肉退縮)原因

歯茎が下がる原因は数多くあります。ここでは、歯茎が下がる原因を解説していますので、当てはまっているか確認してみてください。

歯周病にかかっている

歯茎が下がる(歯肉退縮)原因として、最も多いのが「歯周病」です。

歯周病は、プラークに潜む歯周病菌によって歯茎が炎症を起こし、歯を支える骨を溶かす病気です。歯周病によって顎の骨が溶かされると、骨を覆っている歯茎は退縮します。

歯周病を放置して症状が進行すると、歯茎は次第に痩せていき、歯が長くなったようにみえるのです。

関連記事:歯周病とは?症状と治療法について解説

詰め物や被せ物が合っていない

虫歯治療で装着する詰め物や被せ物が合っていない場合も、歯茎が下がる原因になります。被せ物の縁が歯茎に当たることで炎症が起きるためです。

そのため、詰め物や被せ物が自身に合っているか、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けることが大切です。

正しいブラッシングを行えていない

普段の歯磨きを正しく行えていないと、歯茎が下がる原因になります。例えば、ブラッシングの圧が強すぎることで、歯茎が傷つき、歯肉退縮につながります。

また、歯の表面を覆っているエナメル質も傷つけるため、優しく丁寧に磨くのが大切です。

歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりの習癖も、歯茎が下がってしまう原因になります。歯や歯茎に過剰な力が加わるため、歯の破折だけでなく、歯茎の炎症を引き起こすためです。

特に睡眠中の歯ぎしりは、体重の2〜5倍の力がかかると言われています。歯科医院でマウスピースなどを作ってもらうなど、早めの治療がおすすめです。

歯並び・噛み合わせが悪い

歯並びや噛み合わせが悪いと、歯茎や周囲の骨などに過剰な負担がかかります。その結果、歯茎が炎症を起こし、徐々に歯茎が下がってしまうのです。

矯正治療を行った影響

矯正治療を行うと、歯茎が下がってしまう場合があります。

「矯正器具に不具合が生じている」「無理な力で矯正を行った」などによって、過剰な力が歯茎に加わるためです。このような場合は、歯科医院で矯正器具を調整することで改善されます。

加齢

加齢によって歯茎やその他の組織が退化し、萎縮することで歯茎が下がってきます。口腔内を常に健康にしておけば、歯肉退縮の進行を遅らせることが可能です。

遺伝

もともと歯茎や歯を支える骨が薄い方は、歯茎が下がりやすい傾向にあります。このような場合、少しの力が加わるだけでも歯茎が下がってしまう可能性があるため注意が必要です。

喫煙習慣がある

喫煙習慣は歯茎が萎縮する原因になり、歯肉退縮が起こります。タバコに含まれる一酸化炭素やニコチンは、歯茎の血流を悪くし、歯周病のリスクを高めます。

そのため、歯茎の慢性的な栄養不足や酸素不足を引き起こすため、歯茎が下がる「歯肉退縮」につながるのです。

ホルモンバランス

思春期や妊娠、更年期などによりホルモンバランスが乱れることで、歯茎が過敏になり、歯肉が退縮します。

ホルモンバランスの乱れによる歯肉退縮の原因として最も多いのが、「妊娠性歯肉炎」です。放置しておくと炎症が悪化するため、早急に歯科医院で診てもらうことをおすすめします。

歯茎が下がってきたことで起こる悪影響

歯茎が下がることで、さまざまな悪影響を及ぼします。ここでは、歯茎が下がることで起きるデメリットについて解説します。

冷たいものがしみる

健康な歯の歯根面は歯茎に覆われているため、冷たいものがしみるようなことはありません。しかし、歯茎が下がってくると歯根面が露出し、外からの刺激を受けやすくなります。

また、冷たいものだけでなく、歯ブラシが歯に当たるだけでも痛むことがあります。歯茎が下がる悪影響の中で、最も起こりやすい症状の一つです。

食べ物が歯に挟まりやすくなる

「歯と歯の間に食べ物が挟まってきた」と感じる場合は、歯肉退縮の可能性があります。歯茎が下がってくると、歯と歯の間に隙間ができます。

その部分から食べ物が挟まりやすくなり、虫歯や歯周病などにつながるのです。

虫歯のリスクが高まる

前述したように、歯茎が下がると食べ物が挟まりやすくなります。それと同時に、歯垢や歯石が溜まりやすくなるため、虫歯のリスクも高まります。

また、歯根に虫歯ができた場合、進行が早いため抜歯に至るケースも少なくありません。

関連記事:虫歯の症状と治療法

歯が割れたりグラグラしたりする

歯茎が下がると歯根部分の象牙質が露出し、歯が割れる場合があります。重度になると歯が脆くなり、治療が遅れると抜歯に至る可能性も高いです。

歯茎だけでなく、歯を支えている歯槽骨まで進行しているため、早急に歯科医院を受診してください。

歯が長くなり老けて見える

健康な方のお口であれば、歯と歯茎のバランスがよく、若々しい印象を与えます。しかし、歯肉退縮が進行すると、歯の表面が徐々に露出して長くなったように見えます。

歯が長く見えるようになると、老けた印象を与えてしまうのです。

歯茎を下げない予防策

ここでは、歯茎を下げない予防策をいくつか解説します。

禁煙

タバコに含まれるタールは、血流の流れを悪くし、歯周病になるリスクを高めます。歯茎が下がる最も多い原因が歯周病なので、禁煙は予防に効果的です。

また、タバコは歯周病のリスク増加だけでなく、症状の進行を早めてしまいます。これは、タバコによって酸素が体内に回らないため、体の細胞が弱くなるためです。虫歯や歯周病だけでなく、病気や怪我の予防にもつながります。

歯の定期検診

前述したように、歯茎が下がる最も多い原因が「歯周病」によるものです。自分ではしっかり歯を磨いているつもりでも、磨き残しによるプラークの蓄積から歯周病につながります。

そのため、定期的に歯科医院でクリーニングを受けて、磨き残した汚れを取ることが大切です。

免疫力を高める生活

バランスの悪い食生活は、免疫力を低下させて歯茎の炎症を引き起こす原因になります。免疫力を高めるためにはバランスの良い食事以外にも、新陳代謝を上げる生活も大切です。

新陳代謝が上がれば、血流が良くなります。免疫力も向上するため、細菌に抵抗する力が身につきます。

よくある質問

下がってきた歯茎は元に戻りますか?

下がってきた歯茎を自力で戻すことはできません。歯科医院で「再生医療」や「歯茎の移植」を受ける必要があります。

歯茎が下がってきたらどのようなことが起こりますか?

歯茎が下がることで、さまざまな悪影響を及ぼします。例えば、「老けてみえる」「虫歯のリスクが高まる」「冷たいものがしみる」などです。

歯茎を下げないためには、どのような対策を取ればよいですか?

歯茎を下げない予防策はさまざまあります。「禁煙」「歯の定期検診」「免疫力を高める生活」を意識してみてください。

まとめ

当記事では歯茎が下がる原因と、その治療法などについて解説してきました。

歯茎が下がると歯が長くなったように見え、老けてみられてしまうなどの審美面の問題があります。他にも、虫歯のリスクが高まったり、冷たいものがしみたりなど健康面においてもデメリットが多いです。

当院では、痛みが苦手な方に配慮した治療を行い、専門のドクターが下がった歯茎を調整する治療をおこなっています。「歯茎が下がってきたな」と感じた場合は、ぜひ一度当院にご相談ください。